國學院大學(Kokugakuin University)神道・神社史料集成(Shinto Jinja Database)21世紀COEプログラム(21st Century Center of Excellence (COE) Program)
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経済【概説】

 8・9世紀の神社の経済基盤となるものには、先ず神戸が挙げられる。神戸は、古代において朝廷より特定の神社に付属せられた封戸であり、神封(しんぷ・しんぼう)ともいう。
 『日本書紀』崇神天皇7年11月条に、初めて神戸を定めることが見えるが、大化前代の神戸は封戸というよりは、むしろ神社に属する部民と考えられる。大化改新以後、神祇制度の整備の過程において、神戸が形成されていったものであろう。「神祇令」神戸条によれば、神戸より出す田租・庸・調は神社社殿の造営・供神の費用に充て用いられ、その余剰は神税と称して義倉に准じて貯蔵され、出挙はこれを禁じられた。これらの事務は国司が掌り、検校の結果を神祇官に報告した。「神税」の語の初見は『日本書紀』天武天皇6年(677)5月28日条に、天社地社の神税は3分の1を供神に、3分の2を神主に給えとの勅である。神税は官稲の一種であるが、正税とは別置され、郡の正倉とは別に神税倉に収納されたり、神社付設の神庫に収納したりする場合もあった。神社はその所有する神戸の所産を官に納めることなく、全てその付属する神社が収得して神用に充てた。その余剰(=神税)についても神用以外に転用することは許されず、国司は正税とは別会計にして管理して、その経理を毎年神祇官に報告せねばならなかった。神戸の戸籍・計帳も国司が作成し、これも神祇官が管掌した。一方で、『令集解』「神祇令」神戸条古記説によれば、神戸租の余剰は神祇官に送られることがあったとするが、これは確認できない。しかし、9世紀には神祇官の官人と品官の季禄・馬料・要劇料・月糧・衣服料や神祇官祭祀の費用が京造された神税や神税交易物により支弁されるようになった。このように、神戸に神祇官祭祀に関わる負担が課されたことは、神戸が単なる神社への奉仕集団ではなく、国家の意図を承けて設置されたものであり、神税も神社だけのものではなく、神祇官のものとも意識されていたとする説もある。元来神戸の民は一般の公役に赴かず神社修理などに従ったので、その課役は公戸よりも軽く、経済的にも恩恵を受けていた。『新抄格勅符抄』「神事諸家封戸 大同元年牒」によると、大同元年(806)には神戸を有する神社は170社、神戸の総数は5,884戸である。このうち100戸以上を有する神社は8社で、宇佐八幡宮は1,660戸、伊勢神宮は1,130戸、大和神社は327戸である。100戸未満10戸以上は54社で、その他の100余社は1戸ないし数戸という少数である。これは寺封と比較すると頗る少ないが、これは神社の経済性格が比較的簡素で小規模であったためと考えられている。
 また、神戸の他に神社の経済を支えたものに神田が挙げられる。神田は神社の祭祀・修造などの費用に充てる田地である。「みとしろ」(御戸代・御刀代・神戸田地)とも称した。
 神田には二種類あり、第一は特定の田地を神田として設置したもの、第二は神戸の民の口分田を神田として神社が把握するものである。第一の場合は、神田周辺の公民の賃租によって耕作されたものと考えられている。神田は不輸租田で、売買を禁じられた。その淵源は律令制以前に遡ると思われるが、詳細は不明である。神田の田租は、神社の祭祀・修造の費用に用いられ、余剰は貯蔵されて神税とされた。
 以上は、主に特定神社の経済基盤であるが、神社の中には神戸・神田が設置されないものも多数存在する。官社における供神には祈年祭幣帛を用い、神社修造の費用は祢宜・祝が負担したが、官社ではない神社は祭祀・神社修造の費用を奉斎集団が負担していた。私地の奉献などがその例で、無封の官社でも祢宜・祝の他に既存の奉斎集団の援助があったと考えられる。
(小林 宣彦)

参考文献

  • 祝宮静「律令時代に於ける神社の経済生活」『神道・神社・生活の歴史』、祝宮静博士古稀記念著作集刊行会、昭和6年(1931)
  • 祝宮静「律令時代に於ける神戸と社殿修造との関係」『國學院雑誌』37-2、昭和6年(1931)
  • 福尾猛市郎「神戸に関する一二の考察」『史林』19-2、昭和9年(1934)
  • 岩橋小彌太「神戸、神郡」『神道史叢説』吉川弘文館、昭和46年(1971)
  • 熊田亮介「神戸について」『文化』38-3・4、昭和50年(1975)
  • 大関邦男「神戸に関する試論」『國學院雑誌』95-2、平成6年(1994)
  • 小倉慈司「神戸と律令神祇行政」『続日本紀研究』297、平成7年(1995)

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