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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> c. 国際会議・シンポジウム >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」
国学研究の諸問題(COEテーマセッション・共催:神道宗教学会) 
公開日: 2004/4/2
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1 開催目的

 本プログラムのキーワードの1つである「国学」に関する事業としては、すでに2度に亘る「国学研究会」により最新の研究動向を踏まえた専門的な論議がおこなわれており、また、平成17年度に公開を目指している「国学者データベース」の作成も漸次進められている。
 今回のテーマセッションは、前日開催されたシンポジウム「国学的研究とは何か―神道と日本文化研究の方法的視座―」に引き続いて本学COEと神道宗教学会との共催でおこなわれた。セッションでは、シンポジウムの論議を踏まえながらも、本プログラムに関わる若手研究者が各自で進めている個別的研究を発題し、学内外の神道学・宗教学及び国学史の研究者、神社関係者、またより広く文学や史学など関連諸分野の研究者に対し、対象時期やアプローチ法もさまざまな「国学研究」の現状と研究の新たな展望をそれぞれ発信し、専門を乗り越えた意見交換の場とすることを目的とした。

2 開催日時

 平成15年12月7日(日)9:00〜12:00

3 開催場所

 國學院大學常磐松1号館第1演習室

4 発題者・コメンテーター・司会(敬称略)

発題者
 城陽子(國學院大學COE研究員・國學院大學兼任講師)
 星野光樹(日本学術振興会特別研究員DC・國學院大學大学院文学研究科神道学専攻博士課程後期)
 藤田大誠(國學院大學COE研究員)
 山作良之(國學院大學COE研究員・國學院大學栃木短期大学兼任講師)

コメンテーター
 安蘇谷正彦(國學院大學神道文化学部教授・事業推進担当者)

司会
 阪本是丸(國學院大學神道文化学部教授・事業推進担当者)

5 テーマセッションの詳細
 
【発題1】城陽子「契沖と春満の万葉集研究」
 発題者は、まず契沖と荷田春満の間における師弟関係の有無をめぐる研究史に触れ、春満が契沖の『万葉代匠記』を披見していたことを事実として定位した上で、春満が契沖をどの様に享受し、自説を変化させ、さらにそれが、どの様に人々に享受されていったのかを考察した。その際、従来より知られる春満の万葉集関係著作に加え、國學院大學120周年記念事業の1つの『新編 荷田春満全集』刊行事業にともなう、東丸神社調査にて発見された春満初期の新資料とされる『和仮名訓』なども駆使して春満の万葉研究を検討し、その再評価すべきところは「訓読」そのものではなく、契沖説を享受することで会得された文献学的方法による訓釈姿勢にあり、これが春満以降の荷田家学に引き継がれて、弟である信名の『万葉集童蒙抄』に結実したことにあると結論づけた。

【発題2】星野光樹「幕末維新期における祓の一考察」
 発題者は、幕末期における国学の宗教化について、当時の国学者の教説と、神社という場における儀礼・祭式などの実践とどう結びついたのかという問題を考えるために、平田篤胤の幽冥観を拡充させた京都の国学者・六人部是香の思想を取り上げ、特にその「大祓」理解に焦点を当てて考察した。是香の『大祓詞天津菅麻』では、善悪二段構えの祓が述べられ、それは罪穢を祓うことと同時に「仁慈忠誠」の心を取り戻すものであって、祓という祭祀の実践が「仁慈忠誠」という日々の倫理の実践という問題と関わり、特に自己の教説である「産須那社」への祈祷の如何、神の守護との関わりの中で論じられている。ここに、仏教や陰陽道の存在を幽冥論で退け、信仰の「正しさ」を問題にし、神事の実践をおこなおうとした幕末期における祓の1つのあり方が見られると指摘した。

【発題3】藤田大誠「近代高等教育機関と国学者」
 本発題では、「事実」「制度」「言詞」の講究を目的とする「一種の国学専門の学科」として明治15年(1882)に設置された東京大学文学部附属古典講習科(古典科)を題材に、国学の近代的展開の一端をうかがった。まず明治初期の高等教育機関における科目の変遷と東京大学に関わった「考証派」国学者たちの動向を軸に述べ、古典科の設置経緯からその推移、終焉に至るまでを略述。その上で、設置の原動力となった小中村清矩の略歴を紹介し、東京大学附属総合図書館所蔵の資料などからその国学観の変遷を検討した。中でも小中村が明治初年には1科として立てていた「国体」理解の学問「神典学」が、明治10年代には「歴史学」中に包含されて姿を消し、国学の内容が「歴史学(法制学を含む)」と「言語学」の2つに収斂されていったことを、古典科が採用したのと同じ「実用」重視の「国学」の観点からおこなったものであることを指摘した。

【発題4】山作良之「国学に含まれる諸要素について―平田篤胤の道徳論―」
 本発題では、まず「国学とは何か」「国学の現代的な意義とは何か」という問いに答えるべく、先行研究において指摘された近世国学に含まれる諸要素の調査をおこなって得た結果を披露。そして分析した国学の要素の1つである「道徳的」な側面を取り上げ、平田篤胤の学問からその現代的意味を問うた。篤胤の幽冥説の変化をその著作から4期に分け、篤胤の思想は西洋、印度、玄学への関心と推移して、最終的には幽世の神の裁きというものがなくなっていき、あの世での話よりもこの世での報いというのが中心になってくるという特徴を見いだした。結局、篤胤の手法は「徳目」によらず、「神々の事実を知らせることによって人々を感化する」という国学の方法に則ったもので、この方法に沿って人を徳に赴かせる事実として幽冥説を構想し、その結果として民俗宗教に近づいていくというプロセスがあったことを指摘した。

【討議】
 阪本教授の司会のもと、安蘇谷教授のコメントを踏まえて討議が進められた。
 まず安蘇谷教授と山作氏の間で、平田篤胤の思想の時期区分における『古史伝』の位置付けをめぐって議論が展開され、その幽冥観の展開について再検討が図られた。
 城氏に対しては複数の質問があった。前田勉愛知教育大学教授との間では『万葉集童蒙抄』の資料的性格について議論があり、また西岡和彦神道文化学部専任講師との間で『創学校啓』の位置付けも問題にされ、改めて荷田春満研究の難しさが浮き彫りになった。
 また、幕末維新期から明治にかけての国学については、武田秀章神道文化学部助教授から、当時の国学においては『古事記』『日本書紀』神話がどのように位置付けられ享受されていたのか、という問題提起がなされ、司会の阪本教授や発題者の藤田、青木周平文学部日本文学科教授がそれぞれ発言、近世国学を踏まえた明治期国学者の記紀理解については、未だ研究が少なく非常に大事な問題点であることが確認された。
 最後に、星野氏と鈴木暎一茨城大学教授との間で、六人部是香の著作におけるキーワード「仁慈忠誠」についてやり取りがあり、是香の思想に対し、すぐに「天皇制イデオロギー」と直結させてしまう従来の研究者のような見方は一面的だとしつつ、神職・氏子を含めた1つの実践としての「祭祀」という観点の重要性が指摘された。
 今回のセッションでは、各発題者間における研究対象・時期、またアプローチ法が大きく異なっており、若干雑多な印象は拭えなかったものの、前日のシンポジウムにおける「国学的方法」に対する検討と連動しつつ、近世から近代に至る国学の多様かつ複雑な諸問題を掬い上げて、とにかくも1つの討議の俎上に乗せ、学内外の分野を越えた研究者間において質疑応答が展開された。その意味において、このテーマセッション開催によって、本学COEの中における「国学研究」の持つ可能性と諸課題がよりクリアに見えてきたのではなかろうか。

文責:藤田 大誠(COE研究員)
 
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