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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
國學院大學・国立極東大学第二次ロシア沿海地方国際共同学術発掘調査の概要 
公開日: 2004/10/12
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1.調査の概要
調査地:ロシア連邦沿海地方カヴァレロフスキー地区ウスチノフカ村
調査遺跡:ウスチノフカ8遺跡
調査期間:2004年8月5日〜8月26日(21泊22日間)
調査参加者(日本側):小林達雄・藤本強・伊藤慎二・阿部昭典・中野拓大・岩崎厚志・坂梨夏代・高橋毅・加藤元康・橋口豊・中島里佳・宮下数史・国木田大
調査参加者(ロシア側):A.M.クズネツォフ、A.A.クルピヤンコ、A.B.タバレフ、V.ガピチ、D.ツィガンコフ、M.コロヴィン、M.クドレヴァトゥイフ、N.ヴィヤトキナ、D.クドリャショフ、V.グリチャエヴァ、G.ソボレフ、A.ゴルゥビャエフ、E.バラホンツェフ、M.コロヴニク、N.シャピナ、A.ヴァシニェフ
調査の目的:21世紀COEプログラム「基層文化としての神道・日本文化の研究グループ」の研究課題「東アジアにおける狩猟採集社会の文化と縄文文化研究」の一環として、おもに縄文時代の日本列島とロシア沿海地方の先史文化を比較研究し、日本の基層文化としての縄文文化の成立と展開の背景などを探るために、ロシア連邦国立極東大学と提携して、上記遺跡の国際共同学術発掘調査を行った。

 以下の調査成果の概要は、現在までの整理分析途中の暫定的な所見である。最終的な研究成果の報告書は、今年度末に刊行を予定している。

2.調査対象遺跡とその周辺
 調査遺跡の所在するカヴァレロフスキー地区は、日本海に面したロシア沿海地方東部沿岸部に位置する。同地区は、シホテ=アリニ山脈奥深くに源流を発して、東西を貫いて日本海に注ぐゼルカリナヤ川の流域とほぼ重なる。1906年8月に、デルス=ウザーラとともに、V.K.アルセーニエフらが探検した土地である。ウスチノフカ8遺跡は、このゼルカリナヤ川北岸の高位河岸段丘上に立地する。同地区には、ウスチノフカ1・3遺跡、ケンツヘ土城遺跡など、旧石器時代から中世に至る多数の遺跡が知られている。そうした中で、今回調査を実施したウスチノフカ8遺跡は、ロシア沿海地方の日本海沿岸部における新石器文化の展開過程や、周辺地域との文化交流の実態を探るうえで大きな鍵を秘めた遺跡として注目されていた。

3.調査の経過
8月5日 新潟空港より空路ウラジオストクへ、ロシア連邦に入国。
8月6−7日 調査下準備を経て、現地調査を開始。
8月8−17日 調査進行に伴い、新石器時代の多数の土器・石器類が出土。トータルステーション、デジタルカメラなどで、詳細な出土状況を記録。11日、新石器時代の祭祀に関連すると考えられる棒状土製品。14日、石製玉。16日、新石器時代前期ルドナヤ文化の上半部がほぼ完全な土器などが出土。13日から17日、年代測定のための炭化物試料の採取。
8月18−25日 現地調査を終え、国立極東大学考古学資料室において、出土資料の図化記録等の整理作業。
8月26日 所期の調査課題をすべて終了し、日本に帰国。

ウスチノフカ8遺跡遠景
ウスチノフカ8遺跡遠景

調査の状況
調査の状況

4.調査成果の概要
(1)出土状況
 遺跡は、段丘先端部付近に自然に形成された浅い窪地を中心に広がっており、今回の調査でもその一角を対象とした。
 層位は上位から義悄銑餐悗泙任7層に区別され、新石器時代前期〜青銅器時代(ルドナヤ文化〜リドフカ文化)にかけての土器・石器・土製品・石製品・動物骨などが出土した。新石器時代の文化層は、諺悗ら坐悗任△襦青銅器時代の遺物は、おおむねそれらの上層に出土が限られる。諺悵焚爾らは、新石器時代前期〜後期(ルドナヤ文化・ボイスマン文化・ザイサノフカ文化)にかけての遺物が多数出土している。諺悗鉢坐悗蓮炭化物を多量に含んでおり、焼土の集中箇所も見られた。

(2)出土遺物
土器
 新石器時代前期のルドナヤ文化から青銅器時代のリドフカ文化の土器片約1000点、土製品2点が出土した。これらは、ロシア沿海地方における新石器時代から青銅器時代に至る代表的な各段階に相当する。とくに、約8000年前から4000年前の新石器時代前期ルドナヤ文化から新石器時代後期ザイサノフカ文化にかけての土器群には、器形復元可能な約5個体をはじめとする多数があり、資料的価値は極めて高い。また少数ではあるが、ルドナヤ文化からボイスマン文化にかけての時期に属する周辺地域との関連を示す資料も出土した。なお、日本の縄文土器と同様の回転施文した斜縄文を伴うザイサノフカ文化の土器も、この地域で今回はじめて確認できたものである。
土製品
 棒状土製品と環状土製品の破片が出土しており、当該地域における先史時代の精神文化にかかわるものとして重要である。

ザイサノフカ文化の土器出土状況
ザイサノフカ文化の土器出土状況

ザイサノフカ文化の土製品出土状況
ザイサノフカ文化の土製品出土状況

石器
 石器出土点数は、3000点以上におよぶ。石材はおもに頁岩、チャートであるが、粘板岩、凝灰岩、メノウ、黒曜石なども少数みとめられる。両面調整石器や錐が多数出土したのが特徴的である。出土した剥片・チップ(砕片)の大きさから推測して、いずれもかなり完成形に近い状態で搬入されたのではないかと考えられる。これは、周辺のウスチノフカ1・3遺跡のような石器製作址と推定される性格の遺跡とは相違する特徴である。なお、遺跡周辺では、これらの石器石材の産出地を確認できなかった。
石製品
 特殊な石製品として、垂飾状石製品や石製玉が出土している。

両面調整石器の出土状況
両面調整石器の出土状況

垂飾状石製品の出土状況
垂飾状石製品の出土状況


5.まとめ
 遺跡の性格は、その眺望に優れた立地状況と出土遺物の内容から推測すると、新石器時代前期から青銅器時代に至る各時期を通じて、狩猟活動の際の見張り場所や待機場所などとして季節的に繰り返し利用された可能性が考えられる。
 出土資料は、1.沿海地方東部沿岸部において、現在のところ最古段階と考えられるルドナヤ文化の土器、2.類例のまれなルドナヤ文化終末期に属すると考えられる資料、3.ボイスマン文化の最北限を示す資料、4.初めて確認したザイサノフカ文化における縄文施文土器、5.総じてザイサノフカ文化の生業や精神文化を示す良好な資料などが代表的である。
 ルドナヤ文化については、北海道の縄文早期女満別式土器や石刃鏃などに多くの類似点が知られており、今回得られた資料はこの類似性を新たな観点から検討できる良好な資料である。さらに、出土石器などから推測される当遺跡の新石器文化の生業のあり方は、同様な生態環境の広がる日本列島の北半部の縄文文化と多くの共通性を示唆している。このように、ロシア沿海地方の新石器文化研究にとって多くの重要な成果と、日本列島における縄文文化の展開過程を比較検討するうえで非常に良好な資料を得ることができた。

(監修:小林達雄、文責:伊藤慎二・阿部昭典・中野拓大・加藤元康・宮下数史、写真撮影:加藤元康)

國學院大學・国立極東大学共同調査団
國學院大學・国立極東大学共同調査団




 
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