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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> c. 国際会議・シンポジウム >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」
護符・牛玉宝印研究の現状と課題−日本のおふだ文化− 
公開日: 2004/12/29
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護符・牛玉宝印研究の現状と課題−日本のおふだ文化−

1.開催目的 
本学COEではこれまで平成15年度と16年度の二度にわたって、フランス・パリのコレージュ・ド・フランス日本学高等研究所に保管されている、故ベルナール・フランク氏収集の護符コレクションを調査してきた(調査の概要については、調査報告:平成15年度平成16年度参照)。この調査が今年度で一応の終了を迎えるにあたって、調査の経験を踏まえた上で、今後の護符・牛玉宝印に関する調査・研究のあり方を議論するため、今回のシンポジウムを企画した。
なお本シンポジウムは國學院大學COE総合シンポジウム「神道とその周辺」と連携した企画として、国史学会との共催でおこなわれたものである。

2.日時
2004年12月5日(日)

3.開催場所
國學院大學 渋谷キャンパス 120周年記念2号館 2201教室

4.タイムスケジュール

【12:30〜13:00】 スライドショー上映:ヨーロッパにある日本のお札コレクション

【13:00〜13:30】
発題 千々和到(國學院大學) 問題提起「日本のおふだ文化−護符・牛玉宝印の資料論−」

【13:30〜14:00】
ジョセフ A.キブルツ(フランス国立科学研究センター) 「ヨーロッパに来ている日本のお札−その三つのコレクション−」

【14:00〜14:15】
コメント 松崎碩子(コレージュ・ド・フランス)     

【14:25〜14:55】
稲城信子(奈良・元興寺文化財研究所) 「護符版木の調査に関する経験と課題」

【14:55〜15:25】
宮家準(國學院大學) 「稲荷信仰の展開と護符」

【15:25〜15:40】
コメント 畠山豊(町田市立博物館)

【15:40〜16:10】休憩
/斉算卜全枦玄┯学「國學院大學所蔵の牛玉宝印」
▲好薀ぅ疋轡隋湿絮如Д茵璽蹈奪僂砲△詁本のお札コレクション

【16:10〜16:40】
コメント ジェローム・デュコール(ジュネーブ市立民族学博物館) 
      遠藤基郎(東京大学史料編纂所) 
      
【16:40〜18:00】
総合討論  司会 千々和到


5.概要

発題 千々和到氏
「日本のおふだ文化−護符・牛玉宝印の資料論−」
これまでの調査で存在が明らかになった日本国内とヨーロッパに存在する護符コレクションの概要を紹介し、さらに護符に関する研究の現状を具体的に解説。これまでの護符研究は個別研究に関しては近年徐々に進展をみせているが、「護符」を総括的にとらえ、日本人の信仰史の解明を目指すような研究はいまだ行われていないとして、(1)ヨーロッパの護符研究者・コレクション所蔵機関との連携の模索、(2)護符研究の前進のための方法論の模索、(3)護符・版木調査の方法の検討などの課題が提起された。


パネリスト ジョセフ A.キブルツ氏
「ヨーロッパに来ている日本のお札−その三つのコレクション−」
 現在ヨーロッパにあることが知られている大規模な三つのお札コレクション、すなわちオックスフォード大学ピット・リバース博物館のバジル・ホール・チェンバレンによるコレクション、スイスのジュネーブ市立民族学博物館に寄贈されている民族学者・考古学者のアンドレ・ルロワ・グーランによるコレクション、さらにはコレージュ・ド・フランスのベルナール・フランクのコレクションについて、収集方法の違いから、各コレクションの特徴を明らかにした。
ことにフランク・コレクションについて、その収集が他の二つと異なって独自の個人的な関心から、自費によって、また自ら護符を発行している現地の社寺に赴いて集められたものであり、日本の各地で信仰・崇拝されている神仏の体系を解き明かすための資料として収集された点に特徴があることを指摘した。

コメント 松崎碩子氏
「ベルナール・フランクとお札」
 キブルツ氏の報告に対するコメントとして、ベルナール・フランクとお札との出会いに関して、その始まりがラフカディオ・ハーンの研究を通じてであったこと、1980年のコレージュ・ド・フランスにおける日本学講座開講を期に系統的な研究が始まったこと、またコレクションの収集対象となるお札は信仰の対象として生き続けているものであったことなどが話された。

パネリスト 稲城 信子氏
「護符版木の調査に関する経験と課題」
 元興寺文化財研究所を主体として行われている、護符版木の調査に関して、実際の経験を通じた版木調査の方法と問題点に関する発表がなされた。
 調査の対象となるのは主に室町期以降の経典・典籍の版木や社寺で開板された版木であり、限られた時間の中で大量の版木の調査をする必要から、調査の具体的な流れは調査用紙の記入(法量計測)→写真撮影→拓本採取→データベース化→必要部分の翻刻とかなり機能化されていること、版木の年代測定には裏面の鉈跡(江戸時代以前)や側面の鋸跡(江戸中期以降)なども重要な情報となることなどが説明された。またこれからの課題として、典籍や版木の報告書は大社寺を対象としたものが多いが、中堅の社寺にも多くの貴重な資料があるので、今後は中堅社寺の調査とその成果報告が重要になることが指摘された。

パネリスト 宮家準氏
「稲荷信仰の展開と護符」
 護符研究の方法を探る一つの視角として、宗教民俗学の視点から稲荷関係の護符の展開を追うことでその信仰の展開を分析した。
 まず稲荷信仰の中心である伏見稲荷の絵札は宇賀神(蛇)や神使である神狐を中核として、祭壇が構成されている。一方で仏教の側では稲荷信仰はインドのダキニ天信仰に基づいており、その図像は多くが弁財天に準じた形のダキニ天が神狐を随える形をとっている。また、修験道では神使である狐を自由に操って人に憑依させる飯綱法が流行し、この関係から修験の本尊である不動明王(或いは伽楼羅)が狐の上にのる絵札が生み出された。以上のように信仰の展開によって様々な種類の護符が生み出されたことが報告された。

コメント 畠山豊氏
 在職している町田市立博物館における展示の経験から、護符に関する研究の課題とこれからの展望に関するコメントがあった。
これまで町田市立博物館では、1981年に「護符・祈りの版画−神札と寺札」、1991年には「牛玉寶印 祈りと誓いの呪符」と題する展示を行ってきたが、まず護符の分類ということ自体が大変難しい問題であること、さらに紀年銘のある板木については現在ではあまり多くは知られていないが、調査すればより多く見つかる可能性があるとの示唆がなされた。また、近年日本各地で、古民家の屋根裏から大量の護符が俵詰めにされた状態で発見される事例が、数多く報告されており、今後はこの事例の収集と内容の分析が重要になるとの指摘があった。

コメント ジェローム・デュコール氏 (通訳:松崎碩子氏)
「The ofuda collection of Andrè Leroi-Gourhan」
 ジュネーブ市立民族学博物館所蔵のアンドレ・ルロワ・グーラン収集護符コレクションに関して、コレクションの収集過程と現状に関するコメントがなされた。
 グーランは1937年から1939年まで国際文化振興会の招聘によって日本に滞在したが、護符コレクションはこの時に自費で収集したものであり、およそ500点余を数える。グーラン自身このコレクションを“小さな神々”と呼び自分で所蔵していたが、グーラン没後に縁あってジュネーブ市立民族学博物館に寄贈された。今後はこのコレクションを、フランク・コレクションの整理にならって、絵札に描かれた主尊によって分類化する予定であるとの報告がなされた。

コメント 遠藤基郎氏
「近代におけるお札図像の変生」
 フランク氏の護符に関する関心が、「伝統的な日本文化が現代日本でどのように継承されているのか」という点にあったことを指摘した上で、養蚕を奨励する目的で作られた「蚕の一生」という印刷掛軸に描かれた女神が、蚕神としてフランク・コレクション所蔵護符にも現れる「宇気女智神」であることに注目。伝統文化と近代国家との接合点を示す史料として紹介した。

総合討論
 総合討論ではパネリスト・コメンテーター相互、および会場との質疑応答が活発に行われた。その内のいくつかを紹介すると、まず俵詰めの護符に関して、日本各地の具体的な事例が紹介され、古民家の解体にともなって最近注目され始めているが、実際は全国的に見受けられる事象でありかなりポピュラーなものであった可能性が示された。
 また、護符の分類に関して、西洋と東洋との比較に関する質問がなされ、西洋の護符は招福を目的とするタリスマンと攘災を目的とするアムレットに分けて説明されるが、実際には両機能は分かち難いこと、日本の護符の源流とされる道教系の護符でも、ある程度目的による分類は可能ではあるが、やはり一様ではないこと、また漢字に代表される表意文字には文字字体に呪力が認められ護符に用いられているが、アルファベットにその性格は見出せないことなどの意見が出された。
 この他、護符を発行する社寺や御師の組織に関する問題や、実際に護符を貼る場所の問題などについての議論がなされた。

 開催日当日は、午前中は季節外れの台風の影響で強風みまわれたが、悪天候の中にも関わらず100名を超える方々に出席していただくことが出来た。パネリスト・コメンテータをお願いした方々、当日会場に来ていただいた方々に、この場を借りて謝意を表したい。
(文責:太田直之)

6.参考資料  シンポジウムへの参加のよびかけ

  シンポジウム「護符・牛玉宝印研究の現状と課題」の開催にあたって

 「神道とその周辺」という今回の國學院大學COE総合シンポジウムのテーマからすると、護符(おふだ、おまもり)は、その議論の重要な資料たり得るものだと考えられる。
 多くのひとびとが、今でも日本全国の社寺に参詣して、護符の類を手に入れている。それらに何を願っているのかを知ることができれば、日本の民衆の信仰のありようを具体的に考えることのできる、良い資料となるはずだ。
 しかし、現在多くの社寺で発行している護符は、その多くが大量生産的に作られたもので、しかも他のどこかの社寺で見たものと同様のもの、というのがほとんどである。かつて発行された護符は、たとえば刷られたものであればその版木が残っているとしても、それは倉庫の奥深くにしまわれ、いずれ忘れられ、あるいは廃棄されてしまう運命にある。とすれば、現在の段階で、そうした版木の所在リストを作成するとともに、かつて発行・頒布された護符を収集・整理しておくことは、きわめて緊急な課題といえるのではないだろうか。そうした現状認識の上にたったとき、まず第1にそうした護符の収集的研究を実施することが必要であろう。
 そして第2に、そうした護符がかつてもっていた、あるいは現在ももっている機能について考えなければならない。たとえば牛玉宝印は、中・近世においては水田の苗代を守り、家を守る護符であった。そして同時に、それは起請文の料紙に用いられることによって、いわば社会の平和と安全を約束する機能を持っていた。では、そうした機能を持ちうる力の源泉はどこにあったのか、と問えば、それはいまだに判然とはしない。こうした疑問を解決し、日本人の信仰史の解明に寄与しようというのが、國學院大學21世紀COEプログラムの一環としての「護符・起請文研究プロジェクト」の立場である。

 以上のような立場から考えると、護符はきわめて重要な資料であると思われる。しかし護符は、あまりに身近な文化財、どこにでもあるものであったがために、かつて発行されたものが、あまり日本国内では収集・保存されていないということがある。ところが近年、ヨーロッパのひとたちが早くからそれらの価値を認め、多くを持ち帰っていたことがわかってきた。たとえばフランスのベルナール・フランクのコレクション、そしてイギリスのバジル・ホール・チェンバレンのコレクション、さらにはジュネーブにあるアンドレ・ルロワ・グーランのコレクションなどである。これら先人たちの慧眼のおかげで、私たちは、日本国内ではあまり見ることのできないそうした護符を、調べていくことが可能となる。
 私たちと東京大学史料編纂所のチームは、これまで2度にわたって協力し合ってコレージュ・ド・フランスに保管されているベルナール・フランクのコレクションを調査してきた。その調査が一段落した現時点で、その調査の経験もふまえて、今後の護符の調査・研究のあり方をめぐって、議論を深めたいと願い、今回のシンポジウムを企画した。多くの方々に、率直なご意見をうかがう場としたいと考えている。
2004年11月
國學院大學21世紀COEプログラム護符シンポジウム準備委員会 

護符シンポジウム準備委員会
事業推進担当者 千々和到
國學院大學21世紀研究教育計画嘱託研究員 太田直之
國學院大學COE研究員 新井大祐・森悟朗・山崎雅稔
国史学会委員 松浦弘
國學院大學大学院 嘉山澄・小林由佳・西ノ原勝・野村朋弘
護符牛玉宝印調査会 大河内千恵・太田まり子


 
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