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シンポジウム「日本人の宗教性の国際比較―日本人はどのように宗教的なのか―」 
公開日: 2005/12/15
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シンポジウム「日本人の宗教性の国際比較―日本人はどのように宗教的なのか―」報告

日時  2005年11月5日(土)午後1時〜5時
場所  國學院大學渋谷キャンパス120周年記念1号館1105番教室
テーマ 「日本人の宗教性の国際比較―日本人はどのように宗教的なのか―」
発題者 
 小野寺典子(NHK放送文化研究所主任研究員)
 吉野諒三(統計数理研究所データ科学研究系教授)
 真鍋一史(関西学院大学教授)
コメンテーター 
 山田真茂留(早稲田大学教授)
司会  
 石井研士(事業推進担当者)

タイム・スケジュール
13:00―13:10 趣旨説明
13:10―14:00 発題(1) 小野寺典子氏「ISSPの「宗教調査」から」
14:15―15:10 発題(2) 吉野諒三氏「意識の国際比較データから」
15:10―16:05 発題(3) 真鍋一史氏「「宗教性」と「家庭をめぐる価値観」−ドイツと日本の国際比較−」
16:05―17:00 コメント及び応答

1. 趣旨
 このシンポジウムは、現代日本人の宗教性に関する調査研究の一環として実施された。これまでに、國學院大學21世紀COEプログラムの研究計画に基づいて、平成15年度に「日本人の宗教意識・神観に関する世論調査」、平成16年度に「日本人の宗教団体への関与・認知・評価に関する世論調査」の二度の世論調査を実施している。こうした世論調査の成果を踏まえて、日本人の宗教性の国際比較をめぐるシンポジウムを開催し、問題提起と現状の分析を行った。


2. 内容

小野寺典子先生

 小野寺氏の発題「ISSPの「宗教調査」から」は、1998年に実施されたISSP(テーマは「宗教」)[註]の、国内の調査結果と国際比較調査の結果の報告である。
 ISSPは毎年テーマを決めて実施されているが、宗教に関する第1回調査は1991年に実施された。参加国はアメリカを含むヨーロッパの国々17カ国であった。宗教に関する第2回調査は1998年に参加国31カ国で実施された。日本は第2回からの参加である。宗教に関する第3回調査が2008年に予定されている。
 小野寺氏は、まず宗教意識の国際比較調査を実施する際の大きな問題点として、日本以外の国のほとんどがキリスト教国であり、特に質問文作成がアメリカを中心としたグループであるため、日本では実際に調査することのできない質問文案が提案されたり、逆に日本の提案が理解されないなどの点をあげた。
 次に、ISSPの日本調査の質問構成を概説したのち、「信仰の有無」「神仏の参拝頻度」「日本人の宗教的感覚」など具体的な項目について説明を行った。そして国際比較については、各国でどのように調査が実施されているのか、質問文の内容の同一性をどのように確保しているのかなど実施上の留意点を述べたうえで、「信仰する宗教」「祈る回数」「神の存在をどのように考えているか」「神の存在」「宗教団体への信頼」「どの宗教にも真実はあるか」などについて国別・年層別に調査結果を分析した。

吉野諒三先生

 吉野諒三氏の発題「意識の国際比較データから」は、大学共同利用法人統計数理研究所が行ってきた日本人の国民性調査や国際比較調査の実施の概要を説明しながら、価値観や宗教に関する比較考察を行った。
 まず吉野氏は日本における世論調査、とくに統計数理研究所の調査の歴史に言及した。統計数理研究所の国民性調査は1953年以来5年ごとに行われ、現在まで11回を数えている。この世論調査は他国にも刺激を与え、アメリカのGSS(General Social Survey)が始まるきっかけともなったものである。国際比較に関しては、1971年に日本人の国民性のより深い理解を目的として、ハワイの日系人調査が実施された。1985年〜1989年には日米欧7カ国国際比較調査、2002年〜2005年には東アジア価値観国際比較調査が行なわれた。
 これを踏まえて氏は宗教に関する調査結果に言及した。日本人の宗教を「信じている」人の割合は50年以上にわたっておおよそ三分の一で安定している。「宗教は大切」とする人の割合は6〜7割であるが、欧米人にはこの「信仰あり」と「宗教は大切」の回答差がなかなか理解できない。「宗教は大切」であるのに信仰を持たない人がいるのは納得がいかないようだ。国際比較の際には、数値だけでなく歴史的文化的背景を考慮する必要がある、とした。
 そして氏は他にも、国際比較を行う場合の技術的な問題としてバックトランスレーション(質問文を英訳し、今一度日本語に訳すことで質問内容の同一性を保つ作業)など興味深い指摘を行った。

眞鍋一史先生

 真鍋一史氏の発題「「宗教性」と「家庭をめぐる価値観」」は、宗教を国際比較する際の概念のあり方と具体的な調査内容に関する発題であった。
 まず、真鍋氏は国際比較の意味について二点を指摘した。第一は、現在、国際比較は社会科学の潮流であるということ。とくに価値観調査については、もともとWVSの前進であるEVS(European Values Studies)が宗教との関わりの中から生じたために宗教に関する質問が多く含まれておりこれ自体の分析も重要であるが、この価値観調査自体がヨーロッパ共同体における価値観の統合という現実的な関心に裏打ちされていたことにも言及した。さらに国際比較のいま一つの意味は、欧米中心の社会科学の現状に対して、日本やアジアからの新しい知識や概念を発信することであると述べた。宗教に関していえば、「神」「信仰」といった概念の再検討のきっかけになるのではないかと指摘した。
 次に氏は、家庭をめぐる価値観と宗教との関係に着目した意図について、「家族」や「家庭」が人間社会の基本的側面であり、宗教的項目と家庭に関する項目の関係には意味があるとしたうえで、ドイツと日本の国際比較に関しては、ドイツでは「結婚歴」「性役割」「性道徳」「妊娠中絶」と信仰の関わりが明確に示されたが、日本の場合には関係は出てこなかった、と分析結果を述べた。
 宗教的な項目に関しては日本と欧米で神概念の相違があり解釈が困難であるとし、例えば欧米の「personal god」の意味には「人格を持った神」「人の形をした神」などが含まれている、こうした言葉を日本語に的確に訳すのは難しい、とした。
 最後に氏は、世界的な宗教性のあり方として、既成の宗教を超えたところで共通する側面が出てきたことを指摘した。たとえばペット・ロスに現れているようなバウンダリー・ロス(boudary loss)であるとか、メモリアリズム(memorialism)がそうではないかと述べた。2008年に実施されるISSPには、こうした項目が盛られる可能性がある、と締めくくった。

1105総合討議

 コメンテーターの山田真茂留氏は、自身の調査体験をもとにして、まず調査で使用される用語の問題に言及した。宗教のあり方に関して、質問の仕方によって回答率が変化することを指摘した。また、用語や概念を統一することの難しさと可能性にふれて、宗教性を普遍的に見ることもできるのではないかと指摘した。個別の質問としては、小野寺氏にはGodの訳語は「神」か、あるいは「神仏」なのか、吉野氏にはバックトラスレーションの仕組みとコーホート(同時期の生年の集団。いわゆる「世代」)の有効性・変化について尋ねた。
 以上の発題とコメントを踏まえてディスカッションが行われた。山田氏の質問に対して小野寺氏は「信仰を持っている」がdenominationでもbelieveでもなくprevalenceであることを述べた。また「神の存在」、すなわち「personal god」についての質問はキリスト教的な意味を含んでいるとしか考えられないと指摘した。
 吉野氏はバックトランスレーションの方法と、調査の有意味性について回答した。
 真鍋氏は日本と欧米の神の把握の相違について、キリスト教神学者カール・バルトを引用しながら説明を行った。
 フロアからは、創価大学の中野毅氏から言葉の問題として「宗教心」にあたる英語と、「personal god」という用語について質問があり、この点をめぐって応答がなされた。
 このシンポジウムには約40名の参加者があった。
(文責:石井研士)


[註]International Social Survey Programme:国際社会調査プログラム。ドイツのマンハイムにある「世論調査の方法と分析のための研究センター」とアメリカ・シカゴ大学の「全国世論調査研究センター」が中心に実施。現行の最も大規模な国際比較調査・価値観調査として、このISSPとWVS(World Values Survey:世界価値観調査。アメリカ・ミシガン大学調査研究センター・政治研究センターのロナルド・イングルハートRonald Inglehart教授が主催する社会調査)をあげることができる。NHK放送文化研究所は1992年からISSPの正式メンバーになっている。






 
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