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総合シンポジウム(第2回)「神道の形成発展−異文化・仏教との関わりを中心に−」研究会議「中世神仏文化の点と線−真福寺の神道書と伊勢神道−」 
公開日: 2006/1/10
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1.開催目的
 中世の神道、とくに伊勢神道の研究は戦前・戦後を通して、宮地直一・岡田米夫・久保田収・西田長男・近藤喜博の各氏によって進められてきた。しかし、近年はその研究に閉塞状況がみられる。一方、この30年、顕密体制論と中世日本紀論が歴史学と文学の両方面から大きく取り上げられ、神道と仏教に関わる研究の状況は、活発な展開が注目される。従来の伊勢神道説と新たな研究の胎動とは、平行線を辿ったまま、「すれ違い」(井上寛司氏の指摘)状態にあるといえる。今回のシンポジウムは、こうした状況の溝を埋め、「神道と仏教」の研究、神仏関係に新たな方向性を見出すことを期待して企画・開催される。広い視野から中世の両部神道と伊勢神道との関係、および中世日本紀とは何か、その領域設定を確認していきたい。(事業推進担当者 岡田 莊司)

2.開催日時

 平成17(2005)年12月3日(土) 13時〜17時20分

3.開催場所

 國學院大學120周年記念2号館2104教室

4.講師・発題者・司会(この項敬称略)
 ・講師
  阿部 泰郎(名古屋大学大学院教授)「中世神道と中世日本紀」
 ・発題1「度会行忠自筆『御鎮座伝記』の発見」
  岡田 莊司(司会・事業推進担当者・「神道と日本文化の形成発展の研究」グループリーダー)
 ・発題2「真福寺神道書の伝来」
  伊藤 聡(茨城大学教授)
 ・発題3「中世神道説に見える<類聚>」
  原 克昭(早稲田大学講師)
 ・発題4「度会行忠の人と書物」
  牟禮 仁(皇學館大学教授)
 ・発題5「紙背文書から見た鎌倉後期伊勢神主の動向」
  福島 金治(愛知学院大学教授)
 ・批評者
  上島 享(京都府立大学助教授)
  平泉 隆房(金沢工業大学教授)
 ※ 参加者・266人

5.会議の概要

講演「中世日本紀と中世神道」
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 講師の阿部氏は、「中世日本紀」の本質が、実体のある特定のテキストではなく、世界の認識を転換させるような操作概念だということを指摘し、即位法や慈童説話などを例に出しながら、神道をはじめとした中世の宗教や文芸作品への影響を示した。
 その上で、神道書に及ぼされた「日本紀」の影響について具体的に触れ、「日本紀」を、伊勢神宮を中心として東大寺や真福寺にまで展開された、世界をテキストとして読み開くための運動であると定義づけた。

発題1「度会行忠自筆『御鎮座伝記』の発見」
 岡田氏は、真福寺に所蔵する『大田命訓伝(伊勢二所皇御大神御鎮座伝記)』の史料的性格について説明した。その要点は、(1)伊勢神道の大成者でもある度会行忠(鎌倉時代後期の伊勢外宮祢宜)が伊勢神道における最重要書として捉えていた。(2)真福寺本はその軸木に「行忠之」という署名があり、それが実際に確認されたことから、行忠自筆とほぼ断定される。(3)巻末に弘安10(1287)年の月読宮顛倒の記事があることからその時期が成立期だと推定される。という以上3点である。

発題2「真福寺神道書の伝来」
 伊藤氏は、真福寺所蔵の神道書について、必ずしも伊勢神宮から伝来したものばかりではなく、複雑な構成となっている点を指摘した。具体的には、(1)伊勢神宮の神職自身の手によって書写されたもの、もしくは伊勢神宮所伝本を祖本として真福寺の僧侶が書写したもの、(2)弘正寺や承安寺など、内宮近くにある寺院から書写されたもの、(3)東大寺の東南院を経由したもの、(4)関東(高幡不動)を経て伝来したもの、などからなるとした。

発題3「中世神道説に見える<類聚>」
 度会家行の『類聚神祇本源』など、中世神道書籍にはさまざまな典籍が引用されているが、原氏はその点をまず取り上げ、朱子学等の典籍を引用していたとしても、そのまま引用しておらず類書を経ている点に留意して、思想の影響を考えるべきであると述べた。さらに、真福寺に所蔵される神道書の中に、作者が仮託されているものが存在するが、それを仮託と考えさせないような言説の流布の存在を理解すべきであるという点を、識語の存在から指摘する一方で、伊勢神道書が秘書化していく過程において、具体的な作者などが抹消されていく事実を紹介した。

発題4「度会行忠の人と書物」
 牟禮氏がまず指摘したのは、『御鎮座伝記』など、いわゆる神道三部書の撰者を度会行忠と見るかどうかについて、説の相違が存在する点である。牟禮氏は行忠以前にすでに成立していたという見解に基づいた上で、行忠が京都や僧侶との深い関係を有していたなどに触れ、当時は伊勢神道と両部神道が混ざり合った状態であったことを示唆した。

発題5「紙背文書から見た鎌倉後期伊勢神主の動向」
 福島氏は、真福寺所蔵の『高宮盗人乱入怪異事』の紙背文書11点を紹介し、そこから読み取れる伊勢神宮祠官の営み、具体的には祈祷や訴訟で京都と伊勢の間を頻繁に往来しているなどといった事象を、具体的かつ詳細に紹介した。さらに、紙背文書の年号や関係者が、『高宮盗人乱入怪異事』に示された元応2(1321)年の事件の時期や登場人物にも近接することから、真福寺本が原本に極めて近い控えのような性格を持つという見解を述べた。

 以上の講演および発題の後、批評者の上島享氏より、中世日本紀・中世神道論の展開過程の把握については、中世社会の形成期である院政期などの状況をもふまえた上で、段階を追って検討すべきではないかという趣旨の意見が述べられた。
 また、同じく批評者の平泉隆房氏より、今後の真福寺と中世神道との関係を考える上で留意すべきこととして、真福寺と大覚寺統との深い紐帯や真福寺開基能信の果たした役割の更なる解明、史料解釈の徹底、さらには中世神道書の悉皆調査に向けた取り組みといった点が挙げられた。
 最後は、(1)伊藤氏が携わっている両部神道研究の進捗状況についての本人からの報告、(2)紙背文書研究の意義についての福島氏の説明、(3)阿部氏による複数専攻による協力体制構築の必要性に関する提言、がなされ閉会となった。
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6.研究会議で得られた成果と課題
 今回の研究会議で特に問題視された点として、まず「中世『日本紀』」の社会的な影響の有無が挙げられよう。阿部氏は講演で、中世の神話的根拠を構築しようとする運動として中世日本紀を捉えた。最近は、中世日本紀の成立を、国家と密着した宗教としての神道が萌芽する画期として捉える考え方もあるが、そうした点を詳細に検討する上においても、阿部氏が、豊かな世界を表現するための社会「全体」における運動として捉えている点は、中世神道の有する一面を巧妙に描写したものとして重視されるべきと考える。
 今1つの論点は、真福寺を軸とした、神道説流布過程の明確化であろう。この点については、特に伊藤氏が詳細に論じたところだが、東大寺東南院との影響関係が大きな意味を有していたことを説明し、また原氏によって特に強調された度会行忠と朝廷との関係が明らかになったことは大きな意味を持とう。阿部氏が示唆した京都の貴族社会と南都との関係を媒介としたネットワークの存在が解明される糸口となるからである。
 もう1点看過できないのは伊勢神道説形成の画期である。これについては、牟禮氏のように度会行忠以前、すなわち鎌倉時代初期から教説の形成があったとする見方と、行忠を成立の重要人物と見て取る考え方が対立している。この点についての詳細な議論は十分なされなかったが、岡田氏も示唆していた通り、その社会的背景を把握する手法が有効な手段となることが理解できたことは大きな成果であろう。
 こうした成果の存在を理解してもなお、事業推進上の課題となる点はある。
 まず、神道思想の内容に関する詳細に見極める必要性が提起できる。講演の中で阿部氏は、鎌倉後期の伊勢神宮に関する神道説として、(1)度会行忠が関与した典籍、(2)通海の第六天魔王の教説、(3)『天照大神御天降記』に見られる荒木田氏周辺における思想、という3つの系統を指摘したが、その点1つ取っても、それらの質的差異とか、貫流する思想の存在の有無とかといった、中世神道の実態を考える上での大きな課題が横たわっているのである。こうした点を総合的に把握することは、残り少ない事業年度で解決できるような課題ではないので、そうした研究ができるような体制の整備(関係史料の収集や協力体制の維持)が少なくとも本拠点には求められよう。中世の神道説を研究することは、末木氏が前日の基調講演で述べたような神道学と仏教学との協力関係を構築する上での重要な接点になりうるからである。
 もう1点挙げるとすれば、神道思想の伝播過程のさらなる解明である。それは、成果の2つ目に掲げた点をより詳細に突き詰めていく作業によって実現されると考える。今後はテキストの伝本過程のみならず、福島氏が明らかにしたところの、神道説の担い手が有する日常的な交流関係などについても配慮しながら検討を進めていくべきであろう。
文責(開催目的以外):加瀬 直弥(21世紀研究教育計画嘱託研究員)
 
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