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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> a. 調査 >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」
日中(漢民族)の宗教文化の比較研究に関する台湾調査 
公開日: 2006/1/28
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1.調査テーマ:日本と中国(漢民族)の宗教文化の比較研究のための儀礼調査・資料収集

2.調査日:平成17年11月17日〜11月23日(6泊7日)

3,調査地:
   中華民国台南県南化郷 南化天后宮
      同  台北県永和市 世界宗教博物館

4.調査参加者:
   浅野春二(事業推進担当者)
   島田 潔(事業推進協力者)
   石井嘉生(大学院文学研究科神道学専攻博士課程後期1年)

5.調査目的:
 本調査は21世紀COEプログラム・第2グループ「神道・日本文化の形成と発展の研究」の内の「神道思想における儒教・道教の影響に関する研究」の一環として実施されたものである。調査の目的は、日中の宗教文化の比較研究のための中国(特に漢族)の宗教的・呪術的事象についての資料収集であり、具体的祭祀事例の調査として台南縣南化郷南化天后宮における三朝慶成祈安清醮の調査を実施した。
 また、辟邪物の資料収集を目的として台北縣永和市の世界宗教博物館を参観した。

6.調査概要:
 18日は台南市三官路の台南市道教会を訪れ、道教会書記・張文旗氏の案内により、道教会の施設、および祭壇や施設内に実際に使用されている護符、所蔵されている護符などの調査を行った。
 翌19日は台南市道教会理事長・陳栄盛氏より、近年の台湾における道教界の動向や今回調査する醮祭(しょうさい)についての聞き取りを行った。その後、台南県南化郷・天后宮において、「金籙慶成祈安芳醮(きんろくけいせいきあんほうしょう)」行科三旦夕(こうかさんたんせき)の調査を行った(〜21日)。 
 なお、今回、調査を行った儀礼は以下の通り。

 18日:「打火部」「火部開光・啓白」「火部酌献」「恭送火王」「煮油」等。
 19日:「発表」「啓白」「揚旗」「午供」「祭煞」「慶土告符五土神灯」「慶土酌献」「分燈」等。
   同日は「祭煞」等の儀礼で用いられる符についての資料収集に重点を置き、儀礼の合間に、醮に用いられる符や祭具等の撮影・計測を行った。
 20日:「道場進茶」「午供」「放水灯」「宿啓」等。
 21日:「重白」「進表」「午供」「普度」「正醮」等。とくに「進表」での符の使用状況に重点を置いて調査を実施した。
 
 調査にあたっては、台南市道教会並びに天后宮重建委員会の理解と協力が得られたため、厳粛な儀礼の行われている天后宮内において自由に記録・撮影を行うことができた。また調査中に随時、陳榮盛氏から知見を得られたことにより、調査対象をより正確に把握し、理解することができた。

南化天后宮
南化天后宮

清浄符
清浄符。壇を清める際に用いる。

煮油
18日夜 煮油。廟および村落内の除穢を目的とする。

放水灯
20日夕刻 放水灯。村落のはずれの川で行われる、孤魂(鬼)を迎えるための灯籠流し。

普度
21日夕刻 普度。孤魂滞魄(鬼)に対する供養、いわゆる施餓鬼の儀礼。村内の青果市場で行われる。

 
 22日は台北市の世界宗教博物館へ赴き、同館の学芸員による案内のもと、同館内を参観した。辟邪物の特別展示では、「八卦牌」「剣獅」「風獅爺」「太歳符」「安胎符」「収驚符」等の資料が多数展示されており、漢民族の伝統的な辟邪物の概要を理解する上で示唆を得た。


7.今後の課題:
 今回の調査では、漢民族の宗教文化と我が国の神道および民間信仰との比較研究において、「符(護符・呪符)」が一つの重要なテーマとなると考え、特に「金籙慶成祈安芳醮」において用いられる符に重点を置いた調査を実施した。道士が符を書くところをビデオに収め、一部の符についてはその実物を入手することができた。また、実際の儀礼における符の使用状況を観察し記録することができた。
 反面、思想的なレベルにおいて比較検討し、解明すべき事柄がいまだ多く残されている。今回観察した儀礼においても、神観念・神人関係・浄穢観・霊魂観など検討すべき課題が多数あることが痛感された。
また、「金籙慶成祈安芳醮」は土地の神々を祭る儀礼でもあり、我が国における神道・仏教などの「土地鎮め」との比較検討も必要であろう。これも今後の課題である。
 比較研究の際には比較の対象を一枚岩のごとくに考えがちであるが、実際に行われている「道教」の儀礼も様々な要素が重層的に絡みついて成り立っており、これらを一元的にとらえることはできない。「道教」の儀礼も民間信仰的な枠組みの中で行われており、その民間信仰的なものの中にはまた「儒教」的な要素がとけ込んでいるし、道士が行う「道教」儀礼自体にも「仏教」的な要素が多分に見いだされる。このようなことから、中国の宗教文化全体の中で個々の事象を位置づけていく視点が必要であり、その上での比較検討でなければ表面的なものにとどまってしまう可能性がある。しかしながら、中国宗教文化の中での位置づけをしながら個々の事象を比較の対象として取り上げていくことは、はなはだ困難である。台湾の一地方の祭祀儀礼だけでも複雑に様々な要素が絡み合っている。それでも具体的な事象の観察や個別的な資料の積み重ねによる研究方法の模索を進めるより他に方法はない。
 今後も比較の対象である中国の宗教文化についての資料収集を重ねるとともに、我が国の神道・民間信仰との具体的な比較検討の作業を進め、神道の形成に儒教・道教などの中国の宗教文化がどのようにかかわってきたのかなどの解明につとめたい。


文責:浅野春二(事業推進担当者)
 
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