神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成 Kokugakuin University
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総合シンポジウム(第2回)「神道の形成発展−異文化・仏教との関わりを中心に−」国際研究会議「古代・中世の異文化間交流−固有信仰と外来宗教−」 
公開日: 2006/2/15
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1、シンポジウムの目的
 
 私たちは、古代・中世の日本と東アジアの異文化間交流の視角から「神道と日本文化」の諸問題を究明することを目的として、21世紀COEプログラムの開始以来、3回の国際研究会議を開催してきた。
 第1回(2002年3月)は、古代東アジアの「国家の政治・経済に溶解する文化」を追究するとともに、中国山東の山神を勧請して赤山明神・新羅明神なる外来の護法神を創出させた神仏間の交流と、国境をまたぐ異文化摂取の過程と日本化というべき文化創造に注目し、宗教・思想の多様な関係の実態を議論した。第2回(2003年12月)は、韓国の前方後円墳を取り上げ、墓制・葬制に見られる日韓の文化・信仰・儀礼の交流のありかたを解明するとともに、日本の海洋祭祀、外来神を介した神仏信仰、道教・陰陽道摂取後の平安仏教の様相と具体的に検討して、神仏を含む宗教体系の形成について議論した。第3回(2005年1月)は、日本・韓国の国境や境界で顕在化する古代祭祀・信仰の実像を照らし出し、日本・朝鮮・中国の神観念や古代宗教の特質を見通した。どの回も、文献史学・考古学・神道史学などの諸学が共同で議論する学際的なシンポジウムが繰り広げられ、問題を提起してきた。
 これに続く第4回は、「神道の形成発展」を研究テーマとする総合シンポジウムの一環として、「固有信仰と外来宗教」の接触・受容と変容という問題を世界史的な観点から捉え直すことにより、神道・日本文化の客観的把握を意図して企画したものである。

2、日時・会場及び日程

[日時]2005年12月4日(日) 10:00〜18:00
[会場]國學院大学渋谷キャンパス120周年記念1号館 1105教室
      ※共催 国史学会
  
[タイムテーブル]
10:00 開会

報告機
古ノルド語圏の信仰とキリスト教
ウルフ・ドルビーン(スエーデン・ストックホルム大学)
コメント   三橋健(國學院大學・事業推進担当者)

報告供
韓国の原始宗教と仏教 
徐永大(韓国・仁荷大学)
コメント   李成市(早稲田大学)

報告掘
古代北海道の無文字社会と文字・記号・信仰 
鈴木靖民(國學院大學・事業推進担当者)
コメント   蓑島栄紀(苫小牧駒澤大学)

報告検
禅宗の輸入と「日本化」
村井章介(東京大学)
コメント   榎本渉(東京大学東洋文化研究所)

16:10 討論
17:50 閉会
  
司会・千々和到(國學院大學・事業推進担当者)

   ※参加者 127名
 
3、報告の概要

[報告機魯Ε襯奸Ε疋襯咫璽鷸
 スカンジナビア(デンマーク・ノルウエー・アイスランド・スエーデン)においては、10世紀半ばから12世紀末にかけて、固有信仰からキリスト教に改宗されていく過程を論じた。北欧の固有信仰は多神教で、戦いの神、雷神、豊穣神などがあり、屋内で生け贄を捧げる祭りが行われていた。キリスト教が入ってきた初期、キリストは固有信仰の神々の1人に加えられたが、スエーデンの王や全国の人民が参加する9年毎のウプサラの祭祀にキリスト教信者は除外されていた。しかし、やがてキリスト教は、北欧の重要な祭りを基にしてキリストのための祭儀を作り出し、神を聖人として位置付け、教会施設を建てていった。一方、民間にはキリスト教と混淆しながらも固有信仰を反映した世俗的な信仰が残った。またバイキングの王たちはスカンジナビア統一のためにキリスト教の厳格なイデオロギーの助けを必要としたという。キリスト教の受容の契機・時期は地域によって様々であるが、こうしたキリスト教化こそ、北欧のヨーロッパ化であったとした。三橋健のコメントでは、ウプサラの教会建設に関連して、フランス・プロヴァンス地方の白いキリスト、黒いマリアの例が紹介されるとともに、キリスト教化のプロセスでは、在来の神々が邪神として扱われる一方、固有信仰がキリスト教にまつわる神を取り込む形でカルト教団が生まれたことなどが指摘された。

[報告供禄永大氏
 韓国の土着宗教は、自然発生的で体系化された教理を持たず文字化された経典もなく、共同体・社会集団自体が祭祀を行うものであったとし、一方で人生の危機克服や政治権力の正当性の根拠にもなったとした。外来の仏教などが受容されると信仰内容や儀礼のあり方が変化し基層社会に沈澱して民俗宗教となったが、社会や文化に浸透した拡散宗教であり、シャーマニズム(巫俗)・トーテミズムのように多様な宗教要素が入り交じった複合体である。土着宗教は仏教・儒教などの外来宗教にも影響を及ぼし性格の一端を規定した。民俗宗教は神観念としては多神教であり、自然神と人間起源神に淵源する個々の担当領域を持つ機能神等々がおり、社会的には宗教職能者の巫覡とその信徒がいた。土着宗教史上の機能は政治的機能、社会的機能、個人的機能の3つがあり、三者が発揮された時代→社会的、個人的機能が維持された時代(7世紀以降)→個人的機能だけの時代(16世紀以降)と推移する。また、巫俗と仏教は相互に作用した。巫俗には仏教神が入ったが、信仰構造そのものは変わらなかった。一方で、巫俗の神が寺院で祀られて護法神化したり、本地説が派生したりすることがあったとした。李成市氏のコメントでは、在来信仰の場に寺院を建立する例、古代韓族の祭祀ネットワークの違いからの政治圏の形成、濊族固有の習俗であった殺牛祭祀が新羅の支配下で境界祭祀としての殺牛祭天へと変化していくことなどが付け加えられた。

[報告掘藁詭斂民
 北海道・東北北部の蝦夷社会では7世紀以前から河川神・水辺の祭祀やユーラシアに広がる矢印に象徴される呪力信仰など伝統的な諸信仰があった。北海道中央部では10世紀頃「奉」「井」の文字を本州系土器に書き、神を饗応して祈願する冥界信仰、疫神を遮る魔除け信仰の類が東北北部の移住民によって伝播し、社会全体として、異系統の祭祀・儀礼が加わることになった。この外来祭祀・信仰は朝鮮半島から日本各地に受容され、国衙など地方祭祀などに転成しながら東漸したものである。在地社会に普及していた祭祀では土器が神と人をつなぎ、祭祀行為は集団や参加者相互の関係の確認行為にもなったとした。蓑島栄紀氏のコメントでは、外来祭祀の主体者が移住者であること、土器の文字・記号に触発されて、北海道の擦文土器の刻印、14世紀以のアイヌ文化のシロシ(記号)の成立となる可能性の問題、密教的影響を含む祭祀、多元的な信仰の共存等が指摘された。

[報告検和式羮浪雹
 日本文化と見なされている禅文化は、鎌倉時代においては非日本的文化であり、禅寺は中国に等しい異文化空間であった。初期の禅宗には国際的性格が認められていたが、室町時代になると、明代の通交体制により僧侶の往来が激減し、それにともない禅文化も日本の五山組織の中で完結し、国際性の喪失と日本化が進んだ。こうしたなかで、茶の湯、わび・さびの美意識なども出現するとした。榎本渉氏のコメントでは、中世初期の日本と宋の僧侶の往還や漢詩文の作成などの異文化間交流の例に論及があった。

4、討論
 4氏の報告終了後、千々和到の進行により全体討論が行われ、意見が交わされた。まず、日本史学の義江彰夫氏(東京大学)が北欧のキリスト教受容に関して、固有信仰の祭祀場・祭祀空間と教会の関係について発言を行った。次に韓国の巫俗に関連して、フロアから仏教との習合関係(祭祀者が「菩薩」「法師」を称するなど)が始まった時期について質疑があり、さらに中国・朝鮮の誓約儀礼の作法に関して議論が交わされた。また、宗教学・宗教史学の奥山倫明(南山大学)・井上順孝(國學院大學)各氏が固有信仰と外来宗教の交渉、日本宗教史・歴史学の三橋正氏(明星大学)が平安時代の陰陽道など外来宗教の立場から、北東アジア史のソン・チュンウェイ氏(ボストン大学)が渤海などユーラシア文化の日本列島での影響の痕跡に関してそれぞれ所感・疑問を述べた。村井章介氏からは他宗教と喪多元的に交差しあう「神道」とは何か、それの歴史性をどのように捉えるかが問題であるとの発言があり、これに対する応答があった。最後に研究会議の企画者である鈴木靖民・千々和到がまとめの発言を行い、討論を終了した。

5、成果と今後の課題
 第3回国際研究会議において、東アジアはもとより世界史的視野からの取り組みの必要を提言したが、今回、実際に古代・中世を主とするスカンジナビア、韓国の事例に関する貴重な研究成果が得られるとともに、それとの比較を通じて日本の神道・文化の実態に関する相対的、客観的理解に資することができた。さらに古代北海道の本州からの文字・記号を伴う祭祀の受容と在来の信仰との混淆状況、中国禅宗の輸入とその日本化の解明を通して、古代・中世日本の信仰・宗教の特質と普遍性を考察した。とくに後者では古代日本の在地信仰が周縁の蝦夷社会に波及して多元化する文化様態を確認し、中世の禅宗自体の日本化・特殊化の例も北欧のキリスト教受容や韓国仏教のありようとも十分対比可能なことを展望した。
 こうして析出された問題を列挙すれば、次のようになる。
(1)人の移動・交流など外的契機により宗教・信仰の特殊化(日本化)・地域化が進む。この特殊化は、国家・社会・地域・民族が不可分に関係し、国境・地域を越える性格とそれらに制約・統制される両面性があり、そのなかで信仰は多様化の反面、単純化を招く。
(2)外来宗教が固有信仰に影響を与える際、逆に外来宗教もまた固有信仰の要素を包摂するなど、両者が混淆しつつ共存するという現象が確認される。神観念も不変ではなく多種多様である。固有信仰は自立運動を起こし、国家・地域とも連動しやすい。
(3)仏教・陰陽道・冥界信仰などの外来宗教自体には、伝播以前に他宗教の影響や多重の信仰要素が包摂されている。北海道に伝播した外来宗教の場合、本州の在地信仰が発信源となる。しかし、その本州の信仰・宗教がすでに外来信仰を含み込んで多元的に展開している。

 古代・中世日本の神仏関係は、両者習合の歴史とされるが、今回の国際研究会議は、その基盤をなす固有信仰・民俗宗教の事実を交流の視点から捉えようとしたものである。在地の祭祀や信仰と仏教・道教的信仰・陰陽道との接触・交渉が日本的仏教や民間信仰を醸成したともいえよう。習合以前の神道や仏教・道教も異種混交(ハイブリィド)であったとされるが、日本禅宗ではそれが特殊化、単純化される側面も明らかになった。今回の成果が今後こうした異文化との接触・共存や文化変容・形成の様々な具体相を掘り起こし、ひいては日本文化の土台解明に結びつく全体像の研究進展につながることが期待される。
(文責・事業推進担当者鈴木靖民、COE研究員山崎雅稔)
 
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