神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成 Kokugakuin University
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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> b. 研究会 >> グループ3「神道・日本文化の情報発信と現状の研究」
研究集会「現代社会における神社神道の現状―情報化社会と神社神道」 
公開日: 2006/9/27
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研究集会「現代社会における神社神道の現状―情報化社会と神社神道」

1. 目的

 神道は日本文化の重要な要素として現代社会でも命脈を保っていると言われる。しかし、現在の神社神道の具体的な姿に着目すると、それは社会・文化の変動に伴うさまざまな課題に直面していることがわかる。そのような現状を明らかにするためには、実証的なデータの蓄積に加え、現代社会と日本の宗教文化全体を展望する視座の確立が必要である。

 今回の研究集会では、現代社会の特徴を見る上で重要な鍵である「情報化」に焦点を当てる。1990年代以降急速に普及してきたインターネットが神社神道にどう関わってきたのか、という点が最新の具体的な問いとして挙げられるだろう。その背景には、戦後の社会変動に神社神道がどう対応してきたのかという問題がある。その一方で、インターネット上での神社神道の活動を、現代の情報化・グローバル化状況の中での新たな能動的実践としてとらえるべき面もあると思われる。今回は、現場での試みや争点がどのような実践的なコンテクストのもとにあるかを浮き彫りにするため、研究集会という場ではあるが、敢えて、神社界で情報発信を行ってきた当事者・関係者からの問題提起とフロア参加者を交えた討議を中心に進行する方針を立てた。

 さらに、情報メディアを通じての神道と人々とのつながりを、インターネットに限らずより広い範囲で照らし出すため、出版によって流通している神道情報のニーズについての実態調査報告を加えることとした。

2. 開催日時

平成18年9月9日(土) 14:00〜18:00

3. 会場

國學院大學120周年2号館1階 2102教室

4. 発題者・報告者等 (敬称略)

・発題者
 黒崎浩行(事業推進担当者)「神社神道とインターネット―概観と問題提起」
 熊懐隆三(神社オンラインネットワーク連盟事務局)「神社界はインターネットとどうつきあうか」
 佐々木芳信(FJ, Inc. 代表)「神社とITとの融合協和」
・報告者
 坂本直乙子(本学大学院文学研究科博士課程後期神道学専攻)「神道関連書籍の出版動向及び読者の求める神道情報ニーズについて」
・趣旨説明・司会
 石井研士(事業推進担当者)

5. 研究集会の詳細

5-1 発題・報告の概要

 黒崎は、まず第二次世界大戦後の神社神道をめぐる研究史を振り返り、村落共同体の崩壊、都市化、核家族化などの社会変動が神社神道の成立基盤を揺るがせたという一方向的な影響の他に、近年では文化的な領域における神社神道の再帰的な動きや実践(再定義、再構築)が研究され、論じられていることを指摘した。神社神道のインターネット利用も同様の観点からとらえることができるとし、そのためには、情報発信主体が情報技術に対して批判的な態度をとっているか否かと、情報技術を自ら利用することに積極的か否かとを、別の座標軸として分けて考える必要がある、とした。また、情報化社会の楽観的・悲観的な予測にもとづく価値判断よりも、現実の取り組みについて、その実践的なコンテクストを踏まえた正当な評価が広く共有されるべきではないかと論じた。

 熊懐氏は、自身が主宰する神社オンラインネットワーク連盟の設立経緯と内容を紹介し、加えて神社界のインターネット利用の現状と問題点を述べた。「Web 2.0」と呼ばれる、Wikiやブログによって利用者が情報発信者となる最近の動きに触れ、神社を訪れた人々が情報を掲載している時代に、正しい情報を誰でも入手できるよう、最低限の情報や調査データを神社界が組織的に発信すべきである、それは学術的にも有用ではないか、と指摘した。今年7月に神社本庁が各都道府県神社庁に発した通知の「インターネットに関わる神社の尊厳性の護持上、問題となる事項」について、実例の紹介を交えながら問題の所在を確認し、その他に、神社がホームページ上で特異な教義を掲げている場合に神社界としてどのように対処すればよいのか、という問題を挙げた。また、時局問題に関わる主張の発信についても、その必要性を改めて強調した。まとめとして、インターネットに存在しないものはこの世に存在しない、とまで認識し、神社界が情報発信に取り組むべきであることを提言した。

 佐々木氏は、50数社の神社ホームページを制作した経験を踏まえて、業者として関わった立場から発題した。当初、ホームページを作る目的や、経費に見合った利益は何かという点について、クライアントである神社側から明確な説明が得られず、とりあえず神社の紹介だけを載せたが、アクセス数が伸びずに悩んだという。しかし神社関係者と話を交わしていくうちに、インターネットを教化活動に結びつけたいという動機、また口に出さないが氏子・崇敬者を増やしたいという希望があることを知り、まず神社・神道に興味を持ってもらうためのサイト作りに徹することを提案した。するとアクセス数が増え、小学校での地域文化学習に利用されるなどの事例も出てきたという。将来神社に関わることになる世代にどう訴えるか、に焦点を当て、新しい使い方の創造を提案していきたい、ただし現状では祈祷料や氏子区域などの情報に関して、閲覧者よりも他の神社に配慮して公開を控えているという事実がある、と結んだ。

 坂本氏は、現代の日本人と神道・神社との関係が希薄化しつつあるという見解や、神道は「言挙げせず」とも言われ、他宗教に比べて積極的な布教は行わないものだという従来の認識に対して、最近、神道や神社に関する新刊書籍の出版が増加しているという動向に注目し、一般読者が求める神道情報の内容を、大手インターネット書店上の売れ筋書籍へのブックレビューをもとに分析した。読者が神社を身近に感じ、また神社にご利益や癒しを求めるニーズがこうした人気書籍を支えていると結論づけた。

5-2 ディスカッションの概要

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 ディスカッションはフロアからの質問、コメントに発題者・報告者が答えるという形で進められた。以下ではトピックごとに順不同で記す。

 神道関係書籍の新刊点数が増えているという坂本氏の報告に対し、書店の棚では神道のコーナーが狭まっているという指摘があった。坂本氏は書店員への聞き取りから得た事実として、靖国問題や天皇論、江原啓之の著作などが神道とは別の棚に配架されていることを挙げ、従来の「神道」というジャンルに納まらない広がりを神道関連書籍群が持っている可能性を指摘した。またこれに関係して、井上順孝氏(事業推進担当者)より、「神道」というカテゴリーを研究者がどのように定義して調査するか、対象に惑わされない独自の方法を模索すべきだという示唆があった。

 神社の尊厳に配慮を、という神社本庁の通知をめぐっては、実態に即した議論をすべきだ、という提案が井上氏よりなされた。宗教的な制約を無視すれば、完璧なバーチャル参拝やネット決済による奉賽などは技術的に可能だ、と佐々木氏が解説した。これを受け石井は、見えないことや、時間や費用をかけて足を運ぶことが宗教的な世界観を担保しており、技術的に可能なことでもそれを導入することで宗教的な世界観を壊してしまう、という見方を、新宗教教団での衛星通信導入の事例を参照しつつ示した。熊懐氏は、神社に足を運んで参拝し、社頭で祈祷を受けることが基本的なガイドラインであり、由緒の説明なども簡便にすることでありがたみが失われると述べた。井上氏は、神社が守るべきものを中心に持ちつつ一般に向けてわかりやすく情報を発信することと、神道を全くわかっていないライターが売れる本を狙って出すこととは根本的に違う、前者の実践を現場の発想で積み重ねることが重要ではないか、と提起した。

 地域共同体に根差してきた神社が被っている変容の中でインターネットを使って何ができるか、という問題に関連し、神宮大麻頒布のために神職が戸別訪問してもほとんど信用されなくなっている現状の中で、そのドアを開かせるのはインターネットであるという認識がフロア参加者から示された。

 神社のインターネット利用によって旧来の氏子がどう変わるか、という質問に対し、インターネット上のクローズドなコミュニケーションにより、氏子を世帯単位ではなく個人単位で把握する方向を佐々木氏は示した。

 また、近代文明を拒絶するアーミッシュの例を参照しつつ、メディア・コミュニケーションが発達している現代だからこそ、そこで得られない価値を神社に見出す層が現れてきているのではないか、という石井氏の指摘に対し、黒崎は、そうした価値を見出し発信しようとする主体が神職、神社以外にもNPO法人や自治体、出版界など複数現れている現状を視野に入れなければならないと答えた。そうした中で神社側が消費者のニーズに呑まれることなく発信することがどこまでできるのか、という課題を石井氏は提示した。

 インターネットの世界的な広がりという観点からの質疑応答も展開した。インターネットによる発信に対する外国人からの反応と、外国に神道を広める可能性について、熊懐氏は神道の自然観に共感したりアニメの影響を受けたりした外国人のネットワークが広がっている一方で、皇室の尊崇についてはどのように説けばよいか戸惑いもあることを指摘した。

 キリスト教、イスラーム、仏教など他の宗教と比較して神道の動きを把握するべきだ、という意見について、黒崎から、国際的な共同研究、比較研究はなされつつあるが、神道に関しては研究成果がまだ十分でない現状を述べた。また神道に対する外国からの攻撃という面ではインターネット上のセキュリティをどう強化するかが重要ではないかという指摘については、佐々木氏から、厳重なセキュリティを各神社サイトが施すのは無理であるという現状を答えた。

5-3 成果と課題

 神社界のインターネット利用を実践的なコンテクストに即して議論する、という今回の方針のもとで明らかになったこととして、個々の神社が単独でインターネット利用に取り組んでいるように見えて、その実、神社界や旧来の氏子との関係の維持に配慮しつつ新たな関係づくりを模索している、という実情が挙げられよう。それは単純に崇敬社化に向かわない方向を暗示しているように思われる。また、神社・神道に関する情報のニーズとそれに応える発信主体が複数存在している状況の中で神社をとらえ直すことの重要性も再認識できた。

 ただし今後の研究に向けての課題も残した。現代社会の中で「神道」というカテゴリーをどう定義して把握するか、その実証的な手続きを磨いて示すことは、プログラム全体に投げ返すべき重要な課題である。また、神社神道での現状を他の宗教、地域と比較考察するためにも、正確な実態調査のさらなる積み重ねが不可欠である。

(文責:石井研士・黒崎浩行)
 
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