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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> b. 研究会 >> グループ2「神道・日本文化の形成と発展の研究」
研究会「一宮研究会 中世神社史料の性格をめぐって」 
公開日: 2003/7/31
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研究会「一宮研究会 中世神社史料の性格をめぐって」報告
<「神道・日本文化の形成と発展に関する調査研究」研究会>
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1 開催目的
 本学のCOE事業である「神道・日本文化の形成と発展に関する調査研究」では、神社の研究を中軸に据えて推進を行っている。これは、神道と日本文化が最も理解できる場として神社を捉えているためであるが、特に中世における神社自体の実態解明は未だ不十分と指摘する研究者は多い。そこには様々な原因が存在するが、その1つとして、神社関係の文献資料(史料)を有効活用する方向性が定まっていないという点が挙げられる。
 神社に所蔵されている史料ないし、それと深い関わりを持つ史料は、神社関係者や、それと関わりを持つ人々と密接に関わるという面で、神社の社会における位置付けを示す最良の研究材料といえる。ところが、こうした史料を使用するに当たって、差し当たって次の2点について留意すべきであろう。すなわち、(1)量・内容ともに神社によってまちまちであり、当然、そこから解明される位置付けからでは、中世神社の共通した性格を導き出す事ができず、(2)現在そうした史料を見られるに至った経緯、あるいは失われたと想定される史料の経緯についても理解しないと、偏った神社像を示す事になる((2)の問題は過去に愛媛県の調査(リンク:愛媛県東予・中予地域(旧伊予国)調査報告)を行った時にも確認されたものである)、という点である。
 これらを解決する糸口を探るため、中世史研究の第一人者を招へいし、最近特に進展が著しい一宮を題材として発表・討議を行う事とした。参加者の多くは、『中世諸国一宮制の基礎的研究』(岩田書院・平成12年)の編纂を行った中世諸国一宮制研究会が発展した「一宮研究会」の構成員でもあり(本研究会も、「一宮研究会」としては、会自体の研究発表会として位置付けられている)、その問題意識の共通性から、討議からも新たな視点が見いだせる事を期待した。また、本学所蔵「久我家文書」(国指定重要文化財)には一宮関係の史料が存在するが、これを研究者に提供して、史料に基づいた一宮理解の最適な方法を模索する事も、当該研究会の目的として位置付けた。

2 開催日
 平成15年5月30日(金)18:30〜20:30(研究発表・討議)
 平成15年5月31日(金)10:00〜11:00(「久我家文書」見学会)

3 開催場所
 國學院大學渋谷キャンパス本館会議室

4 研究発表者・コメンテーター・史料解説者(敬称略)
 日隈 正守(鹿児島大学助教授・研究発表「薩摩国一宮制に関する諸問題−一宮と国分寺の関係−」)
 井原 今朝男(国立歴史民俗博物館教授・研究発表「御記文について」)
 井上 寛司(大阪工業大学教授・コメンテーター)
 上島 享(京都府立大学助教授・コメンテーター)
 千々和 到(國學院大學文学部教授・コーディネーター・司会)
 岡田 莊司(國學院大學神道文化学部教授・コーディネーター・司会)
 岡野 友彦(皇學館大學文学部助教授・「久我家文書」解説者)
 なお、研究会の出席者は46名だった。

5 研究会の詳細

5-1 発表概要
一宮研究会1
 日隈 正守氏 研究発表「薩摩国一宮制に関する諸問題−一宮と国分寺の関係−」
 薩摩国衙との関わりが深く一宮を称した八幡新田宮と、薩摩国国分寺は、人的組織が同族である点、神事の共同・契約関係・神人役の負担などが見られる点、訴訟の雑務を共同して行っている点などから、密接な関係を持っていたという論を展開した。

一宮研究会2
 井原 今朝男氏 研究発表「御記文について−神社史料の問題点について−」
 神社史料の特質として、廃仏毀釈・近世国学・近代国家神道による改変が認められる点を指摘し、これまでの神社史研究になかった中世神話を神社に関係する仏教史料群から解明していく視座を提起した。その上で、諏訪大社を題材として、中世縁起成立の前段階に「諏訪御記文」(金沢文庫)を位置付けた。すなわち、あまりこれまで注目されていなかった記文は、寺社の縁起とは違い、神そのものの宣言であり、より本源的な神祇思想を示す史料であるとした。

5-2 本研究会より得られた成果と課題
一宮研究会3
 各発表ごとに、コメンテーターによる批評と数名の出席者より質問がなされた。その質疑は予想通り活発化し、論点は多岐にわたったが、ここでは具体的なやりとりを割愛し要点をまとめた事を、はじめにお断りする。
 まず、日隈氏は薩摩における国衙と神社の関係を土地関係の史料から、井原氏は信濃諏訪社の神観念を御記文から探っているが、ともに神社のみを史料収集・分析の対象とせず、仏寺も射程においているという共通性を有していた。今までに解明された中世宗教の実態を考えれば、これは当たり前の事の様にも理解できるが、実際にはこうした姿勢は従来あまり見られなかったものである。井原氏が指摘する通り、神社史料の改変は実際にある以上、こうしたアプローチ方法をとる必要性は、今後の本事業を推進するに当たっても留意すべき点と言えよう。神社史料の保存過程においては、神社関係者自身の意思が大きく反映される例も多く、神社側の視点という要素が常につきまとうからである。
 ただ、神社における史料の改変は、一部の神社においては近世初頭から見られるものであり、このような点を踏まえれば、特定の時代における思想や政策のみが、史料伝来の影響要素というわけではなく、直接的に史料を改変する立場にある、各時代における神社関係者個々の動向を、詳細に確認する作業が必要となろう。
 続いてそれぞれの発表についてであるが、日隈氏の見解は、国衙機構と八幡新田宮との密接な関係が、薩摩国一宮選定に多大な影響を及ぼしたとする、氏自身の業績をさらに補強する内容を有しているが、この状況を薩摩国一国の動向として捉えるか、全国的な展開の一端として捉えるかという点については、井上氏からのコメントもあったが、今の時点でははっきりした事が言えないのが実情である。それはそのまま神社関係史料の残存状況に直結する問題でもあるが、最初にも述べたように、国分寺との関係に対象を拡げた事が、他国と比較する材料を拡げる事にもつながるので、特に、「一宮制」の本質を探るに当たって重要な研究方法を提示した意義は、本事業としても活かしていく必要がある。
 井原氏の御記文への注目、すなわち、縁起形成の前段階として、御記文に見られるような、神意の表明があったとする見方は画期的とも言えよう。今後は千々和氏が指摘したところの、「弥陀の誓願」との類似性など、御記文そのものの性格解明が急がれる。また、中世宗教の実態把握には、全国網羅的な神社縁起の実態把握が必要不可欠となる。これには神社縁起の収集という困難な作業が横たわっているが、これについては、来年度以降の「神社資料データベース」の項目として、本事業としても関わるべき作業と位置付ける必要があろう。

5-3 「久我家文書」見学会
 31日には「久我家文書」の見学会が開催され、最近この文書群を主要な素材にした研究をまとめられた岡野氏による解説が行われた。当該文書には尾張一宮・真清田社に関するものが含まれているばかりでなく、同国内の熱田社の記述もあり、神社と地域社会との関わりや・国内の土地所有の形態等を知る上で重要な史料を閲覧した。
 「久我家文書」から解明できる一宮の実態の中は、研究史上重要な意義を持つものも含まれており貴重であるが、一宮研究の多角化等の現状を踏まえれば、改めてその再読・検討も必要になってこよう。本事業では、本学所蔵の諸資料を活用する事も拠点形成のために重要視している。現在、学内においてはこれらを使用した研究会も行われているが、本事業推進に当たっても、神社の実態を知る上で、「久我家文書」も含めた学内所蔵の史料を利用し、分析・検討を加え、発信する事も展望に据えておく必要があろう。

文責:加瀬 直弥(COE研究員)
 
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