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ホーム >> COEプログラム事業の遂行と成果について >> c. 国際会議・シンポジウム >> グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
熊本シンポジウム「古代九州の古墳文化と韓国の前方後円墳」 
公開日: 2003/11/26
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2003年9月13日、熊本県熊本市の水前寺共済会館において、「古代九州の古墳文化と韓国の前方後円墳−古代国家形成期の異文化間交流」と題するシンポジウムを開催した。その概要は以下のとおりである。

 

1、概要
主題 古代九州の古墳文化と韓国の前方後円墳−古代国家形成の異文化間交流−

日時 2003年9月13日(土) 10:00〜17:00
会場 熊本県熊本市 水前寺共済会館
  
共催 肥後考古学会 
協力 熊本大学文学部考古学研究室・熊本古墳研究会・國學院大學院友会熊本県支部

参加人数 75名


◇ 趣旨説明 鈴木靖民(國學院大学・事業推進担当者)

◇ 調査報告 山崎雅稔(COE研究員)
 韓国全羅道地域の前方後円墳の現地調査報告

◇ 報 告
   朴天秀(韓国・慶北大学)  韓国全羅道前方後円墳地域の歴史的性格と倭−栄山江流域を中心として−

   睫擽各鵝雰本県宇土市教育委員会)  九州の古墳文化と対外交流

   古城史雄(熊本県教育委員会)  肥後と北部九州の横穴式石室とその系譜
    
   椙山林継(國學院大学)  祭儀・祭礼から見た九州の古墳文化 
 
   鈴木靖民(國學院大学)  倭と百済の府官制

◇ 討 論
 モデレーター 鈴木靖民・睫擽各
 討論者    朴天秀・古城史雄・椙山林継


2、内容

◇趣旨説明
 まず、事業推進担当者の鈴木靖民教授より、開催の趣旨説明が行なわれた。内容は以下のとおりである。

 日本古代の文化形成には朝鮮半島の文化が大きな影響を及ぼした。一方、近年次々と確認された韓国全羅南道・全羅北道の栄山江流域・海南半島・湖南地方に分布する5〜6世紀の前方後円墳は、日本の古墳時代にもっとも特徴的な葬制・墓制が影響を与えたものとされ、墳形のみでなく石室の構造や埴輪などにみる葬送儀礼が九州中・北部の古墳文化とつながるものとして注目されている。

 この全羅道地域の歴史的性格をめぐる議論では、日本(倭)・百済・加耶の各地との関係をどうみるかが大きな争点である。そのなかでも、関連する熊本県・福岡県地域の古墳に対する洞察が不可欠の課題となっている。両県域の古墳の構造や出土品のなかには、朝鮮半島や日本列島各地との関係が指摘されている例が少なくない。全羅道地域の前方後円墳の被葬者については、すでに『日本書紀』が記す倭系百済官人の活動と結びつける見解がある。そのほかに倭王権と無縁の倭系移住民とする説、百済王権に服属しない慕韓人という説、百済王権と関係をもつ在地勢力という説などもある。

 古墳は、倭王権の性格と密接に関係し、古墳間の秩序は王権の政治秩序を反映するとの見解が有力である。だが、前方後円墳の葬送の儀礼・祭式が社会規範や価値観念を表し、王権ともつながりをもつとしても、畢竟、文化的内容を示すのであり、倭国の画一的な政治体制までは示さないという異論もある。前方後円墳の展開は政治性と文化性の両方を帯びる議論と歴史的な解釈が要請されている。

 全羅道地域の前方後円墳についても、日本と韓国の国家形成期、古墳の造営や葬送にうかがわれる物質・精神両面にわたる文化の細部を探ることにより、各地域の社会構造・支配・対外関係、ひいては政治と文化・信仰の実相に迫るとともに、日本と朝鮮半島を結ぶ遠隔地間もしくは異文化間の多彩な交流の意義を具体的に捉えることができるに違いない。それはともども東アジアレベルでの歴史・文化の特質の究明に寄与するものであろう。

 このシンポジウムは、「古代九州の古墳文化と韓国の前方後円墳」をテーマに掲げて、國學院大学が21世紀COEプログラムの研究活動の一環として主催し、肥後考古学会の共催、熊本大学考古学研究室、熊本古墳研究会・國學院大学院友会熊本県支部のご協力を仰いで開催するものである。

 今回のシンポジウムでは、とくに古代国家形成期における“日本文化の形成と異文化間交流”という問題意識と視角に立ち、豊かな研究蓄積を有する熊本の地において、あらためて日本と韓国の考古学・古代史研究者がともに最新の成果を携えて集い、闊達な議論・意見交換を進めるものである。報告・討論を通して、熊本県域、さらには日本と韓国の歴史と文化に対する新たな収穫がえられれば幸いである。
(文・鈴木靖民)

◇調査報告
 つづいて、COE研究員の山崎雅稔が2003年2月・5月に2次にわたって実施した韓国全羅道地域の前方後円墳調査の概要を説明した。その内容は、本学21世紀COEプログラム・ホームページの調査報告に別途掲載した(下記URL)。
               http://21coe.kokugakuin.ac.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=44 

◇研究報告
 ついで、5人(朴天秀・睫擽各鵝Ω転觧僕此椙山林継・鈴木靖民の各氏)による研究報告が行なわれた。

朴天秀氏の報告では、栄山江流域における古墳の首長系譜の考察を通じて、同地域の前方後円墳が6世紀前半を中心にして1世代だけ営まれ、1つの小地域に1基ずつ分布すること、その被葬者は、土着の勢力に対する牽制と対倭・対大加耶攻略のために、王侯制のような支配方式の一環として、百済王権によって一時的に派遣された人物群であることが指摘された。

睫擽各鷸瓩諒鷙陲任蓮⇒明・八代海沿岸地域を中心とした九州の古墳文化について、阿蘇石製の石棺が瀬戸内海沿岸や近畿地方にまで運ばれた事実や、倭の有力豪族である大伴氏との関係などを指摘し、同地域の豪族が倭の中央勢力との関係を持ちながら、朝鮮半島の各地とも交流した可能性が指摘された。

古城史雄氏の報告では、肥後・北部九州地域の横穴式石室の地域差を比較・検討することにより、韓国の倭系石室が九州のどの地域の影響を受けているのかを通じて、6世紀第1四半期までは北部九州の影響が強く、第2四半期以降になると有明海沿岸地域との関連性が強い石室が見出され、玄室内の遺体安置施設は九州的要素が強いことが指摘された。

椙山林継氏の報告は、もとより近畿地方で始まった古墳文化が北部九州地域で受容されていく過程で、横穴式石室として地下宮殿を指向し、また同時に家族墓としての性格を備えたという、2つの特徴を持ったことを指摘した。あわせてそれらが大和地方とは異なる死後の世界観を持っていたことを示すものであるという理解を示した。

鈴木靖民氏の報告は、中国周辺諸地域での王権を核にした国家機構形成につらなる支配制度として、王が臣下を軍事的性格を帯びた府官に任命する府官制の役割に注目して、百済の軍事活動や倭の対外交渉を分析し、全羅道地域の前方後円墳の意義を明らかにしようとしたものであった。

◇討論
 5人の報告が終了したあと、鈴木靖民・睫擽各麥昌瓩鬟皀妊譟璽拭爾箸靴董▲侫蹈△箸琉娶交換を交えた討議が行なわれた。肥後・北部九州地域の古墳文化の特質、石室構造、阿蘇石製の石棺を通じた交流に関する事実確認が行なわれたあと、韓国の前方後円墳との関係についての議論が行なわれた。


3、シンポジウムの成果と課題
 今回の熊本シンポジウムの最大の成果は、韓国での前方後円墳の現地踏査により見通しを得ていた北部九州・肥後地域と全羅道地域の交流の実相を、最新の研究成果に即して具体的に検討することができたことである。とくに、睫敲鷙陝Ω転詈鷙陲砲茲辰董⇒明海・八代海沿岸地域の役割や、横穴式石室の構造の地域的な特徴や変化を通して朝鮮半島の倭系古墳の当地域との関係を把握できたことは重要である。これにあわせて、朴天秀氏の栄山江流域を中心とする倭系古墳の分布に対する検討によって、朝鮮半島になぜ前方後円墳が造営されたのか、という大きな問題を考えるための手がかりを得ることができたことも、大きな成果である。『日本書紀』に伝えられる筑紫君磐井の反乱記事や火葦北国造の阿利斯登とその子で百済官僚となった日羅をはじめとする朝鮮半島との交渉を示す文献史料とのすり合せが改めて問われるであろうし、考古学的には須恵器の編年など今後より精査な検討を必要とする部分もある。議論は、九州と朝鮮半島の交流にとどまらず、近畿地方の中央豪族と九州の関係や、倭と半島との交渉全般、そもそも古墳がもつ墓制としての意味・役割にも及んだが、これらについては限られた時間のなかでは議論し尽くされなかった。

 本プロジェクトでは、東アジア異文化間交流史研究会として、2003年12月13日に 「韓国古代の前方後円墳と日本の古墳文化」 を主題にした国際研究会議を開催する。そこで熊本シンポジウムでの成果をふまえて、改めて日本列島と朝鮮半島の古墳文化と交流に関する学術的な検討を行なう予定である。このテーマに関する現時点での最新の成果にもとづき、今後の研究の課題と方向性を見出したい。

※12月13日のシンポジウムの詳細については下記URLを参照。
    http://21coe.kokugakuin.ac.jp/modules/news/article.php?storyid=55

(附記)
 今回のシンポジウムは、肥後考古学会、熊本大学文学部考古学研究室、熊本古墳研究会、國學院大学院友会熊本県支部の各団体・研究機関の諸氏の多大なご協力・ご支援のもとに開催された。末尾ながら、ここに記して謝意を陳べたい。

(文責・山崎雅稔)
 
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