北海道道東地方における考古資料調査


1.調査の概要
調査地:北海道道東地方(釧路市、標茶町、斜里町、網走市、常呂町、女満別町)
調査先:釧路市立博物館、釧路市立埋蔵文化財センター、標茶町郷土館、斜里町文化財センター、北海道立北方民族博物館、常呂町立埋蔵文化財センター、東京大学常呂実習施設、女満別町教育委員会
調査期間:2005年7月29日〜8月1日(3泊4日)
調査参加者:藤本強・伊藤慎二・阿部昭典・加藤元康・中野拓大・宮下数史・渋谷賢太郎・國木田大(自主参加を含む)
調査の目的:21世紀COEプログラム基層文化としての神道・日本文化の研究グループにおける研究課題「東アジアにおける狩猟採集社会の文化と縄文文化の研究」の一環として、おもに縄文時代の日本列島とロシア沿海地方の先史文化を比較研究し、日本の基層文化としての縄文文化の成立と展開の背景などを探るために、北海道道東地方の縄文時代早期に展開した石刃鏃石器群とそれらを伴う土器群を対象とした資料調査を実施した。石刃鏃石器群とその共伴土器群は、従来からロシア極東方面との強い関連性が指摘されており、縄文文化を東アジア史的観点から理解するうえで重要な資料のひとつである。2003年度・2004年度には、本学とロシア国立極東大学とのロシア沿海地方における国際共同学術発掘調査によって、これらの資料と対比される同時期の良好な資料を得ることができた。今回の調査では、おもに北海道とロシア極東の相互で類似するこれらの資料を比較検討することを主目的とした。

2.調査の経過
7月29日 羽田空港より空路にて釧路空港に到着。釧路市立博物館および釧路市立埋蔵文化財センター所蔵の東釧路遺跡第驚賄澄∈ヶ岡第2遺跡、材木町第5遺跡の各出土資料を調査。
7月30日 標茶町郷土館所蔵の二ツ山遺跡第1地点・同第3地点の各出土資料を調査した後、二ツ山遺跡を現地踏査。さらに、斜里町文化財センター所蔵の大栄1遺跡・ポンシュマトカリペツ遺跡の各出土資料を調査。
7月31日 北海道立北方民族博物館所蔵のロシア極東少数民族関係資料・アイヌ民族関係資料の見学。常呂町朝日トコロ貝塚を現地踏査した後、常呂町立埋蔵文化財センター所蔵の常呂川河口遺跡出土資料および岐阜第2遺跡の各出土資料を調査。
8月1日 東京大学常呂実習施設所蔵の朝日トコロ貝塚、女満別町教育委員会所蔵の女満別豊里遺跡の各出土資料を調査した後、女満別豊里遺跡を現地踏査。所期の調査課題をすべて終了し、女満別空港より空路にて羽田空港に帰着。

3.成果の概要
  北海道道東地方の石刃鏃石器群は、時期を異にする複数の土器群と共伴する。女満別式土器は、こうした石刃鏃石器群に伴う土器群のなかでも、ロシア沿海地方のルドナヤ文化やアムール川下流域のコンドン文化の土器などいわゆるアムール編目文系土器群と非常に類似することが従来から知られる。そこで、今回の調査では、女満別式土器とそれらに伴う石刃鏃石器群に特に焦点をあてて調査した。現在までに知られている主要な出土例のすべてを詳細に観察記録し、一部を図化した。その結果、これらの資料が、出土遺跡によって微妙に異なる土器文様施文手法・土器製作手法あるいは石器製作過程を有することを確認し、さらにはロシア極東の類似資料との相違点・共通点についても具体的に検証できる手掛かりが得られた。現在、これら現地調査によって得られた所見を基に多方面から分析を進めており、今年度に実施するロシア沿海地方および大韓民国における資料調査結果とあわせて、それらの最終的な研究成果報告書を刊行する予定である。
  文末ではあるが、今回の調査にあたってご厚意あふれる様々なご協力を頂いた、訪問調査先関係諸機関ならびに諸氏に厚く御礼申し上げる。

(監修:藤本強、文責:伊藤慎二・阿部昭典・中野拓大・加藤元康・宮下数史・渋谷賢太郎・國木田大、写真撮影:伊藤慎二・加藤元康)

作業状況:標茶町郷土館朝日トコロ貝塚踏査状況     









(左:標茶町郷土館における作業状況、右:朝日トコロ貝塚現地踏査状況)





日時:  2005/10/7
セクション: グループ1「基層文化としての神道・日本文化の研究」
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